①教科書ベースの出題
教科書の内容をしっかり理解していれば解答は可能という出題内容でした。いわゆる難問・奇問はなく、愛知県の公立高校入試に通ずる作成意図を感じました。「覚えていないと無理」といった知識問題は、適性検査Iでは10/30点、適性検査IIでは3/30点だけで、長い文章・資料を読み取る読解力・速読力が求められる出題でした。見たとたんに諦めたくなるような問題はほぼなく、「粘り強く考えれば答えにたどり着ける」ものがほとんどでした。
②情報処理能力が鍵
適性検査Ⅰ・Ⅱともに18ページにわたる問題量で、それをこなす処理能力が重要となります。Ⅰは基本的な問題が多く、Ⅱは知識だけでは難しい問題が多めというくらいが違いでしょうか。問題文自体は小学生でも理解しやすいものですが、読まなければいけない分量はかなりのもので、何を問われているのか的確に判断する必要があります。全問選択式のマークシート形式での難易度を上げるには定石の方法で、公立高校入試がマークシート化した際に感じた印象と似ています。
③その他、特徴的な出題
音楽や体育、家庭科の内容からも出題があり意表を突かれましたが、しっかり授業を聞いていれば大丈夫でしょう。知識があるに越したことはありませんが、国語力や推理力で補える子もいるのではないでしょうか。また「プログラミング的思考」から、と言うよりはプログラミングの問題も出題されました。
では、愛知県の私立中学受験と比べると難易度はどうだったのでしょうか?
一問一問の難易度はそこまで高くはなく、愛知県内の私立中学校だと名古屋・南山男子・愛知淑徳を受験する生徒であれば解けるくらいのものでした。適性検査としては「全国的に中程度」といった意見が1次選抜終了後に多く聞こえてくるくらいでした。しかし、一問一問の難易度と試験全体の難易度は必ずしもリンクするわけではないため、実際のボーダーラインは明和中7割程度、刈谷中6割程度、半田中5割強程度と高得点での争いにはならなかったようです。明和中の1次合格者数から考えると、7割以上の得点をできた子が全体の13%程度。「時間が足りない」という子どもが多かったのではないでしょうか。
大手中学受験塾の情報から見るに、南山女子>東海=滝>明和>>名古屋=刈谷>南山男子=愛知淑徳>半田>名電>愛知=春日丘というような立ち位置になっています。明和・刈谷・半田の3校は空白地帯となっていた偏差値帯にちょうど入ってきたというところでしょうか。特に女子は南山女子・滝に合格しないと選択肢が一気に下がってしまう状況でしたので、選択肢が新たに与えられた格好と言えるでしょう。
他県にはない全問選択式という問題上、大きな出題傾向の変化はないでしょう。であれば、対策すべきことは明確です。「教科書レベルでの理解を深める」「読書スピードを中心とした処理能力を上げる」に尽きます。あとは、この試験に限った話ではありませんが、数字に強い子の方が有利でしょう。単純に計算力があるということではなく、数を扱う感覚という感じでしょうか。
来春2026年度からは、三河地区の中学校や愛知総合工科の附属中も新たに開校します。愛知総合工科高校は、愛知県内No.1とも言われる工業設備をもっており、求人倍率は20倍を超える就職に非常に強い高校です。しかし、実は国公立大に年内受験で10~20人が推薦で入っていく学校でもあります。一般入試でも京大や名大をはじめ、20人前後の国公立大やMARCHの合格者をここ数年は出しています。また名城大、中部大、愛工大、豊田工業大といった県内私大にも年内受験(推薦)で入っており、愛知県内の大学進学実績では名古屋西高校や愛知高校など高校入試では上に位置するような高校より上回っているような状況です。進路指導では年内受験(推薦)に力を入れているようですので、国公立大が今後年内受験を推進していくことを考えても、注目すべき学校と言えるでしょう。ものづくり分野という募集がある大阪の咲くやこの花中も人気のようですので、愛知総合工科附属中も人気が出てくるのではないでしょうか?
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