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「公立が当たり前」と言われてきた愛知県の高校入試は、今、大きな転換点を迎えています。私立高校授業料の無償化を背景に、受験生・保護者の意識はどう変わったのか。倍率の裏側で何が起きているのか。県内で長年指導と進路支援に携わってきた3名の教育専門家が、最新データと現場感覚をもとに、これからの高校受験で本当に知っておくべき「新常識」を語り合います。


所得制限撤廃の衝撃

心理的・経済的ハードルの完全消滅

酒井: ついに2026年度から、私立高校授業料支援の所得制限が完全に撤廃されますね。愛知県は長らく「公立王国」と呼ばれ、私立は学費が高いから公立を目指す、という流れが、堅実な県民性もあり、当たり前でした。この大前提が崩れた今、空気はどう変わりましたか?
近藤: 本当に「劇変」という言葉がふさわしいです。以前は三者面談で私立を勧めると、真っ先に「でも学費が……」とブレーキがかかっていました。それが今では、保護者の方から「無償化されるなら、手厚い私立の方がいいですよね」と身を乗り出して相談されます。2025年12月に発表された最新の進路希望調査で、公立希望者が過去最低の60.5%、私立が過去最高の24.8%という数字が出たのも、この心理的なストッパーが外れた結果です。
 : 教務の視点で見ると、特に偏差値45〜55、通知表がオール3から「4」が少し混じる中位層の動きが止まりません。かつてはこの層が公立の中堅校を志望していたのですが、彼らが一斉に私立へシフトしています。私立高校側も、ICT教育の導入や制服のリニューアル、新設学科の設置など、公立にはないスピード感で「選ばれる努力」をしていますからね。


公立高校人気の二極化

3倍超のサバイバル入試と止まらない定員割れ

酒井: 興味深いのは、公立全体の希望者が減っているのに、名古屋市内の上位・中堅校ではかつてないほどの激戦が起きている点です。
 : そこが最近の入試の最も怖い部分です。ここ数年、松蔭、中村、天白、山田といった名古屋市内の人気校が、少子化に合わせて募集人員を1クラス分40人減らしましたことがあります。しかし、名古屋市内志向が強い受験生たちが志願先を変えなかった結果、松蔭の3.08倍を筆頭に、多くの学校で倍率が3倍を超えてしまいました。
近藤: 3倍ということは、クラスの3人に2人が不合格になるということです。公立入試でありながら、私立の激戦区のような「ケアレスミス一つで人生が変わるサバイバル」になっています。一方で、アクセスの悪い郊外の公立高校は定員を減らしてもなお全体で2,400人以上の定員割れを起こしています。「便利な人気校への過集中」と「郊外校の過疎化」という、恐ろしいほど二極化が進んでいます。
酒井: 定員割れ校は「全入」でラッキーと思われがちですが、入学後のリスクも無視できませんよね?
近藤: ええ。一番の懸念は「環境の停滞」です。定員割れで学力層が混在しすぎると、授業レベルが低きに流れ、意欲のある生徒まで伸び悩む傾向があります。また、生徒数減少で部活動の廃部や行事の縮小が相次ぎ、高校生活の満足度が下がるケースも少なくありません。
 : 進路面でも、大学側からの評価が下がれば「指定校推薦枠」の減少にも繋がります。「楽に入れる」ことの裏には、こうした学習環境や将来性の低下という大きなコストが隠れていることは、受験生や保護者も知っておくべきですね。


私立入試の構造変化

一般入試は「残りわずかな席」を奪い合う椅子取りゲーム

酒井: 私立高校の志願状況を見ると、大成(12.2倍) や滝(12.1 倍)、名城大附(9.3倍)、中京大附中京(9.1 倍) など、驚くような高倍率が並んでいます。目に見える数字に惑わされて『自分には無理だ』と焦る受験生も多いですが、この「数字の裏側」をどう読み解けばいいでしょうか?
 : 今の私立入試は、人気商品の「先行予約」と「当日販売」に例えると分かりやすいです。今の愛知県の私立入試は「推薦入試」が本線です。定員の約80%という大部分の席が、いわば「先行予約」のように推薦入試ですでに埋まっています。つまり、一般入試が始まる前に人気の私立高校の椅子は8割が取られてしまっている。残りわずか2割の席を一般入試で奪い合うため、当日販売の行列が長くなるように、「見かけの倍率」が高く見えるんです。
近藤: そこで知っておいてほしいのが「実質倍率」という視点です。一般入試の列に並ぶ人の多くは公立志望の併願者なので、高校側は公立へ流れる生徒を見越して募集定員の何倍もの合格者を出します。いわば「行列は長いが、先頭の人たちが次々と本命(公立) へ抜けていくので、意外と順番が回ってくる」という構造です。
酒井: 具体的な数字で見ると、その差に驚きますね。
近藤: そうなんです。昨年度の見かけ倍率10.4倍だった滝高校が公表した実質倍率は1.75倍でした。中部大第一や名古屋工業にいたっては見かけは3~4倍のところ、実質1.04倍と、受験者のほとんどが合格しています。ですから、表面上の数字だけでパニックになる必要はありません。
 : ただし、楽観視も禁物です。近年は私立第一志望の「先行予約(推薦)」組が激増し、当日販売に回る「座席数そのもの」が削られています。特に中京や名城のように人気大学の附属高校は、一般入試でも第一志望とする受験生が多いので他校ほど合格者を多く出せず、実質倍率も高止まりする傾向にあります。
近藤: そうですね。内申点が足りずに一般入試で逆転合格を狙うことは、以前よりはるかに難しくなっています。少し前まで「滑り止め」とされていた高校が「もはや滑り止めではない」という事態も起きています。だからこそ、こうした最新データを冷静に分析し、生徒や保護者へ「本当の難易度」を伝えて戦略を立てていくことが、今の塾の重要な役割なんです。


なぜ「私立附属校」が

これほどまでに支持されるのか

酒井: 授業料が無償化されたとしても、それだけでこれほど私立が選ばれるわけではありません。そこには「大学入試」への強い不安が透けて見えます。
 : その通りです。大学入試改革の不透明さ、そして「共通テスト」の難化。一般入試で国立大学を狙うハードルがどんどん上がっています。そんな中、系列大学への内部推薦や、豊富な指定校推薦枠を持つ私立高校は、非常に魅力的な「出口」に見えるんです。
近藤: 特に私立大学の定員厳格化の影響で、これまで中堅校から受かっていた私大が受からなくなっている。「それなら、高校入試の段階で大学まで決めてしまおう」という安全志向が、私立附属校人気を決定的なものにしています。ICT教育や探究活動への取り組みも、私立は圧倒的に早いですからね。


受験生が取るべき

「勝ち筋」の生存戦略

酒井: では、この激動の入試を勝ち抜くために、我々は生徒に何を伝えるべきでしょうか。
近藤: 何よりもまず「内申点は中学1年生から」ということです。私立推薦がメインストリームになった今、中3になってから頑張るのでは推薦基準(ボーダー)に届きません。提出物、授業態度、副教科。すべてが合格へのチケットになります。
 : そして「合格後の過ごし方」の意識改革です。1月末に私立推薦で合格し、そこで勉強を止めてしまう生徒が多すぎます。しかし、高校に入れば推薦組も一般組も同じスタートライン。合格後の2ヶ月間、学習塾への継続通塾など「中学の総復習」と「高校の先取り」をやり切った子だけが、高校入学後の学年順位で圧倒的な差をつけ、その先の大学入試も制するんです。
酒井: 「公立が当たり前」だった時代は終わりました。私立無償化という制度の変化を、単に「楽をするためのもの」にするか、「より高い目標へ挑戦するためのチャンス」にするか。それは、今この瞬間の戦略と行動にかかっています。我々も、最新のデータを武器に生徒一人ひとりの「最適解」を出し続けていきます。

本日は近藤先生、林先生、ありがとうございました。

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