
大学入試は、この半世紀の間に社会構造や教育観の変化を色濃く反映しながら、大きな転換を繰り返してきました。1949年に始まった国立大学の一期・二期校制度から、共通一次試験、大学入試センター試験へと移行し、知識量を測定する一斉筆記試験が長らく大学入試の中心でした。しかしその一方で、受験競争の過熱や学力観の画一化といった課題も顕在化し、大学入試は常に「何を評価すべきか」という問いに向き合ってきたのです。
2020年度からは大学入試センター試験に代わり「大学入学共通テスト」が導入され、思考力・判断力・表現力を重視する方向へと舵が切られました。さらに、2022年度から始まった高校新学習指導要領に基づく教育を受けた生徒が2025(令和7)年度入試から本格的に大学受験に臨んできました。これにより、共通テストや個別試験でも、単なる知識の暗記ではなく、資料読解や複数情報の統合、そして課題解決型の思考を問う問題が増加する結果となりました。
令和8年現在の大学入試の大きな特徴として挙げられるのが、「入試の二極化」です。今現在、全国には国公立・私立を合わせて約790校の大学がありますが、そのうち特に私立大学「全国に約600校」では約6割の大学で定員割れが生じている一方で、残り約4割の大学には志願者が集中し、難関化が進んでいます。少子化が進行する中でも、大学間の競争はむしろ激化しているのが現状なのです。そして今後、この現象は国公立大学にも起こるであろうと推測されています。


こうした状況の中、近年特に存在感を高めているのが推薦入試・総合型選抜入試です。かつての推薦入試は、指定校推薦や公募推薦が中心でしたが、現在では「スポーツ推薦」「資格・検定活用型推薦」「課外活動推薦」など多様化が進んでいます。さらに、国公立大学も含めて拡大しているのが、旧AO入試を発展させた総合型選抜入試なのです。
総合型選抜入試では、調査書や志望理由書、活動報告書といった書類審査に加え、面接、小論文、プレゼンテーション、グループディスカッションなどを通して、受験生の学習意欲、目的意識、主体性、社会性を多面的・総合的に評価するものです。統計的にも、現在では全国の大学入学者のおよそ半数が、何らかの推薦・総合型選抜入試によって大学へ進学しており、一般選抜入試と並ぶ大学入試の大きな柱となっているのです。
このような入試改革の背景には、社会が大学に求める人材像の変化があります。 AI やデジタル技術の急速な発展、グローバル化の進行、価値観の多様化が進む現代社会においては、課題を発見し、他者と協働しながら解決策を考え、行動できる人材が求められています。そのため大学入試も、知識量だけでなく、学びに向かう姿勢や将来の可能性を評価する方向へと進化しているのです。
さらに長期的な視点で見ると、大学入試は今後も大きく姿を変えていくと考えられています。象徴的な将来像としてしばしば語られるのが、2050年頃には、旧帝大の一つである東北大学をはじめとした先進的な大学において、従来型の学科筆記試験が姿を消し、総合型選抜入試を中心とした入試へ全面的に移行する可能性があることです。これは現時点での確定情報ではないですが、東北大学が掲げる「研究第一」「社会とともにある大学」という理念や、高大接続改革の流れを踏まえると、決して非現実的な構想ではないのです。
もしそのような時代が到来すれば、大学入試は「一度きりの試験」ではなく、「高校生活全体の学びと成長の記録」を評価するものへと完全に転換すると思われます。成績、資格、探究活動、課外活動、社会貢献、プレゼンテーション能力などが総合的に評価され、大学と受験生が双方向に理解し合う選抜入試が主流になると考えられます。

こうした入試環境において、重要性を増しているのが高校1年生からの学習姿勢です。現在の大学入試では、高校1年生から3年生までの成績が評定平均として評価され、推薦・総合型選抜入試のみならず、一般選抜入試においても重要な判断材料となっています。 つまり、大学入試は高校入学直後からすでに始まっていると言っても過言ではないのです。
日々の授業に真摯に取り組み、基礎学力を着実に身につけることに加え、自ら課題を見つけて学ぶ探究的な姿勢を育むことが、将来の進路選択の幅を大きく広げます。その積み重ねこそが、変化の激しい時代においても揺るがない力となり、大学入試、ひいてはその先の人生にもつながっていくことと言えるのです。

