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恵土: 近年、私立高校人気の高まりが全国的な傾向として見られますが、愛知県の高校入試は今、どのような状況にあるのでしょうか?

林先生: はい、愛知県も例外ではなく、私立高校の人気が急激に高まっています。この動きは、公立高校で定員割れに現れており、欠員募集である「公立高校2次募集」の人数が5年連続で2,000人を超えているんです。

恵土:それは驚きですね。公立高校を志望する層自体が減っているということでしょうか。

林先生:そうとも言い切れません。旭丘、明和、向陽、菊里、千種といった旧学校群の、もともと人気のある公立トップ校を目指す生徒は減っていません。しかし、変化が起きているのは「公立か私立か」を迷う中位層です。

恵土:中位層というと、具体的にどのくらいの偏差値の生徒を指しますか?

林先生:偏差値で申し上げると、45~55くらいの生徒さんたちですね。この層が、過去にないほど私立高校を第一志望校に選択するケースが増えているのが、今の愛知県の大きな特徴です。


恵土:この大きな流れの変化は、どのような要因で起こっているのでしょうか?

林先生:要因は大きく二つあります。まず一つ目は、国の「私立高校授業料の実質無償化」政策です。

恵土:経済的なハードルが取り払われたということですね。

林先生:まさにその通りです。以前は「公立は授業料が安いが、私立は学費が高い」という理由で私立高校は選択肢から外れることが多かったのですが、無償化でその壁がなくなりました。結果、保護者は公立・私立を「教育の質」「校風」「通いやすさ」という、同じ視点で比較検討しやすくなりました。これにより、手厚い教育や独自のカリキュラムを持つ私立高校が、中位層にとって魅力的な選択肢となったわけです。
恵土:授業料無償化が進んでいる大阪府では、公立高校の約半数が定員割れしているという話も聞きます。愛知県でも今後、同じようなことが起こり得るのでしょうか。

林先生:愛知県はもともと公立の2校併願が可能でしたので、大阪府ほどの急激な変化は起きていません。しかし、2026年度からは所得制限が撤廃される方針で、さらなる無償化が進む見込みです。これにより、今後、愛知県の高校入試の勢力図が大きく変わる可能性は十分に考えられます。


恵土:もう一つの要因は何でしょうか。

林先生:大学入試制度の改革も、私立高校人気を後押ししています。大学入学共通テストが難化する中、一般入試で挑むよりも、指定校推薦や公募型推薦、総合型選抜、あるいは内部推薦を利用して系列大学へ確実に進学しようと考える家庭が増えています。

恵土:安全志向ということですね。

林先生:その通りです。また、大学定員の厳格化(定員超過の禁止)により、私立大学全体の合格者数が減っています。この状況が、系列大学へ進学できる附属高校の人気を高め、結果としてさらに狭き門になっている状況です。


恵土:私立高校の人気の高まりは、入試の形態にも影響を与えているのでしょうか?

林先生:与えています。私立高校の推薦入試を利用する受験生が急増しているんです。愛知県私学協会では「合格者数は、推薦・特色入試あわせて当該校募集人員全体の80%程度以内とする」という申し合わせを行っていますが、この枠を最大限に活用する高校が増えていると見られます。

恵土:結果として、一般入試の枠が減ってしまうと。

林先生:その通りです。一般入試の枠が減り、少ない枠を争うために一般入試は難化しています。さらに、優秀な生徒が集まり始めたことで、従来の合格ラインだった内申点では推薦基準を満たせなくなるケースも増加し、難化に拍車がかかっています。

恵土:受験生は今、どのような対策をすべきでしょうか?

林先生:私立高校の難化は「滑り止め」と捉えられていた私立高校が、もはや「滑り止め」ではなくなっているということを意味します。大学進学を目指す層の進路が多様化し、私立高校入試全体の難易度が押し上げられている現状を受け、公立志望の受験生であっても、以下の2点の対策は必須となります。

1つ目は、中学1年生からの内申点対策の徹底です。
併願校の合格基準が厳しくなっているので、公立・私立を問わず、中学1年生からの計画的な内申点対策が、受験戦略の鍵を握ります。

2つ目は、私立入試対策の早期取り組みです。
確実な併願校の合格を勝ち取るため、従来の公立入試対策だけでなく、私立高校それぞれの独自の入試傾向を把握した対策を早期から組み込むことが重要です。

恵土:私立高校の人気が高まっている状況を考えると、中学1年生のうちから、しっかりと学校の成績を取ること、きちんとした学習習慣の形成が求められるということですね。本日は貴重なお話をありがとうございました。

 

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